3年ぶりに一般ランナーが疾走 都心を駆け抜けた東京マラソン

山本亮介 中山由美
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 3年ぶりに一般ランナーが都心を駆け抜けた東京マラソン(東京マラソン財団主催)。新型コロナウイルスの感染が続くなかでの開催で、主催団体は沿道での観戦自粛を呼びかけ、ランナーに感染防止策の徹底を求める異例の大会となった。ランナーやスタッフ、沿道の人々には様々な思いが交錯した。

「ウィズコロナ 試金石に」

 好天に恵まれたこの日、約1万9千人が都庁前をスタートしていった。

 東京都杉並区の会社員松野賢一さん(54)はウクライナ国旗と同色の青いウェアと黄色のパンツで臨んだ。反戦を訴える渋谷の集会でもらった青と黄のリボンも右手に結んだ。松野さんは「つらい思いをしているウクライナの人たちに、一日でも早く平和が訪れるよう願いを込めた」。

 小金井市の自営業成田真紀さん(49)は、大会が開催されたことへの感謝の気持ちで走り抜けた。「ウィズコロナの世の中でも、こうすればイベントができるんだ、という試金石に東京マラソンがなってくれれば」と話した。

 一方、参加資格がありながら、辞退した人もいる。東村山市の会社員島田裕樹さん(45)は、主催団体の案内メールを読み、辞退を決めた。感染対策の説明はあったが、「コロナ下でも開催する意義」が伝わってこなかったからだ。「子どもたちはいろんなことを我慢しているなか、なぜ自分が参加するのか。共感できる意義がなければ、大人だけ楽しむことはできないと思った」

 抽選に当たってから、初マラソンに備えて週に15~20キロ走り、準備してきた。自分のようにワクワクする人が何万人もいると思うと、すごい大会だなと実感した。参加者には楽しんでほしいし、大会で感染が広がらないことを心から願う。「今後もずっと続く大会。都民が応援したくなるような大会となるよう、主催者はメッセージを発して欲しい」と話した。山本亮介

沿道の人も思い交錯

 新宿をスタートし、東京駅前がゴールの今大会。沿道では「立ち止まっての観戦はしないで」とスタッフらが声をかけたが、応援する人も少なくなかった。

 東京・日本橋。稲城市のランニングチームに所属する芥屋範江さん(51)と清水幸枝さん(57)はチーム名とマークが入ったボードを掲げ、家族や仲間を応援していた。芥屋さんは「東京がやったことで、地方の大会も再開できるようになってほしい」と話した。

 娘の夫の応援に来た神奈川県川崎市の古川隆夫さん(73)は「開催は大賛成。初めて見に来て元気になりました」と話していた。

 買い物に来たという足立区の伊藤浩子さん(64)は、「外でのイベントなら開催してもいいのでは。暗いトンネルをいつ抜けられるか、誰もわからない。この機会を逃したくないでしょう」と話す。社会人1年目の今野美咲さん(23)は、「私たちは卒業旅行も行けなかった。ランナーは検査して走っているのでいいが、声を出しての応援はやめてほしい」と話した。

 コース沿いの老舗乾物店「八木長本店」の西尾英明さん(40)は、「応援自粛の要請もあり、以前ほどの人出はない」と話す。新型コロナの感染拡大が収まらない中での開催に、賛成とは簡単に言えないという。ただ、「一日でも早く、街に活気は戻ってほしい」。

 東京マラソンに毎回、応募しながら一度も当たらず、ボランティアで5、6回参加している葛飾区の染谷弘美さん(66)は、2月下旬から毎日検温し、細心の注意を払ってきた。「走者を応援する役割なのに、走者から『ありがとう』と言われるのがうれしい。役に立てたのなら、よかった」と話した。中山由美

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