文筆家・鈴木涼美さん
国土交通省の統計不正が明らかになったとき、元新聞記者で文筆家の鈴木涼美さん(38)は漫画「進撃の巨人」を思い出したと言います。権力者が平気で国民の記憶を書き換える社会――。それが今の日本ではないかと危惧しています。
国民の記憶の書き換え…「進撃の巨人」
――国土交通省で基幹統計の書き換えが発覚しました。
漫画「進撃の巨人」を思い出しました。時の王が壁の中の住民たちの記憶を書き換えて、壁の外の記憶を全て消し、実際に経験した歴史とは異なる歴史を信じ込ませることで統治していたというのがこの物語の肝です。
それって、今の日本みたいだなって。
統計は基本的には「歴史」です。それを変えるということは国民の記憶を変えるということで、過去を変えることなんですよ。その国の歴史をもう追えなくなるというレベルの重罪だと思います。歴史を好き勝手に変えられたら統治なんて簡単にできるじゃないですか。
ペン先と消しゴム一つで変えるというのは、自分らの雇い主である国民への背信行為です。それはやらないということで民主主義国として成立しています。信じていた歴史がうそかもしれないというのは、もっと大きいニュースのはずなんです。根幹が揺るがされているわけですから。
でもそんなに大きい問題じゃないみたいな感覚があるのかなと感じますね。
――問題だと思っている人がいても、それで何か動いていくようには感じられません。
おそらく「問題だと思いますか」と聞かれたら、「問題だ」とみんな言うんだけれど、国家に対する不信感が生まれる契機になるほどではないのかな。例えば、森友・加計問題や厚生労働省の統計問題もあったけれど、政権交代が起きるわけでもない。
今回の統計不正では、GDP(国内総生産)の算出に関わる数字が書き換えられていた。政権の評価に関わる数字です。こんな大事な数字を書き換えられていたら、この国の言っていることは一切信用できないということにならないですか。
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