処理水放出と風評対策どう考える? 福島の高専生が討論

福地慶太郎 藤波優
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 東京電力福島第一原発の処理水や風評被害にどう対応するべきか。福島高専の学生たちが、地元関係者や専門家らの話を聞いて考える討論会が19日、いわき市の同校であった。科学と社会のはざまに生じる諸課題を主体的に考えてもらうのがねらいで、学生たちは活発な議論を通じて処理水の問題への理解を深めた。

 日本原子力研究開発機構の大場恭子技術副主幹(原子力社会工学)らでつくる実行委員会が企画。福島第一原発の廃炉や福島の復興に関する授業を受けている3年生33人が参加した。

 放射性物質トリチウムを含む処理水を海洋放出すると政府が決めた経緯や、県産品の風評被害の現状などをまとめた資料を参考に4班にわかれて討論した。

 途中、地元の人々の思いを聞く場面も。いわき市の漁師の新妻竹彦さん(60)は、「関係者の理解なしに処理水を処分しない」との約束があったのに海洋放出が決まり、「国と東電に裏切られた」と訴えた。

 ある学生は「海に流すと水産業は売り上げが減ると思う。海洋放出はデメリットがでかい」と指摘。これに対し、「一度流して反応をみたら」「期限を決めて(トリチウム分離の)技術開発をし、だめだったら海洋放出するのはどうか」などの意見が出た。

 また、海洋放出の際のトリチウム濃度の基準について、「緩すぎるかも。どんな基準か知りたい」と質問する学生も。東電の担当者は「その水を毎日2リットルほど飲んでも年間の被曝(ひばく)線量が一般人の限度(1ミリシーベルト未満)になるような濃度が基準になっている」と説明した。

 一方、処理水の海洋放出の安全性は十分に示されているとして、「報道の仕方や社会の受け止め方が問題では」という意見が出た。処分方法を検討する政府の小委員会メンバーだった福島大の小山良太教授は「事故直後は東電に厳しい報道もあったが、いまはフェアに伝えようとする姿勢を感じる」と答えた。

 県産品の風評被害の現状や対策についても、学生たちは熱心に討論した。

 菅野いちごさん(18)らは、福島高専として県産品を他県の高専の人たちに食べてもらう計画を提案。地元関係者から「すごく面白そう。ぜひやって」と支持された。討論会の終了後、菅野さんは「こんなに処理水について考えたことはなかった。専門家や関係者の意見が聞けてよかった。学んだことを家族にも話したい」と語った。

 今野涼太さん(18)はこれまで、友人とは処理水の話がしにくいと感じていたという。「きょう意見を出すことで理解が深まった。こういう場が日本全体に広がれば、理解も広がると思う」と話した。

 清藤(せいとう)杏加さん(18)は風評被害を実感していなかったが、資料に記された消費者の意識調査を見て、いまも県産品を避ける人がいることを知った。「どうしたら風評被害を少なくできるか考えていきたい」福地慶太郎藤波優

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