無観客開催で消えた東京五輪のチケット代、628億円は都が負担

斉藤佑介
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 コロナ禍で原則無観客となった東京五輪パラリンピックのチケット収入の減額分について、東京都が628億円を負担することになった。大会経費の支出抑制分で賄えるため、新たな公費負担は生じないという。22日、大会組織委員会の理事会で報告された。

 組織委によると、今回の決算見通しでは、組織委の収入は6343億円。チケット収入の大半を失ったことで、昨年末から867億円減となった。収支にずれが生じるため、組織委は239億円分の支出を削減し、残りの628億円は都が「安全対策」として負担することで整えた。組織委や都、国で合意した。

 都は、都が負担する大会経費の大幅な削減が見込めたことから、新たな公費負担なしで628億円を支出できると判断した。「安全安心な大会のための無観客開催。都民の安全に資するものとして都が支出すべきもの」としている。

 理事会では全体の決算の見通しも報告された。大会経費は総額1兆4530億円で、昨年公表の予算から1910億円圧縮された。

 都がチケット収入の減額分を受け入れた後の大会経費の内訳は、組織委が6343億円(前年比867億円減)、都が6248億円(同772億円減)、国が1939億円(同271億円減)。会場の仮設工事費の削減や無観客による警備費の圧縮、契約の見直し、大会関係者の削減による輸送費減などの効果が大きいという。決算は来年6月ごろにまとまる見通し。

 武藤敏郎事務総長は「経費の削減努力が実ったと思う。予算の収支を均衡させることは我々にとっても重要で、責任は果たすことができた」と話した。国と都の支出が合わせて8千億円を超えた点については「未来への投資という観点からも適切性が判断されるだろう」とした。

 東京都の小池百合子知事も22日夜、記者団の取材に応じ、大会経費全体が予算を下回り、追加予算が不要になったことについては「(組織委、国、都の)3者がそれぞれ工夫しながら、節減してきた成果だ」と評価した。減収分の628億円を都が負担することについて担当者は「最後は全部(負担を)みるのが開催都市としての責任」と強調するが、負担内容は「安全対策」としか説明されておらず「何を対象とした支出なのか、今後都民に明確にする必要はある」と話す。

 都庁内では、大会経費が赤字となり、都税を追加投入することになった場合、国にも負担を求める考えがあったという。だが、黒字化したことで状況は一変。都職員の一人は「追加投入が不要になった以上、もう国とけんかする必要はなくなった。減収分の面倒を都でみても世間からの批判も強くないはずだ」と話す。

 ある幹部は「私見」としたうえで「無観客開催で全国から人が集まる状況ではなかった。国の税金を入れれば納得しない人が出てくるだろう」と指摘。減収分を都でまかなう決定が「落としどころだ」と語った。斉藤佑介

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