シャインマスカット、出荷量トップに 「もう巨峰に戻らない」 山梨

永沼仁
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 【山梨】皮ごと食べられる甘いブドウとして人気の「シャインマスカット」。県内では昨年、出荷量で「巨峰」を初めて上回り、今季も好調な出荷が続く。緑にとどまらず、赤や黒の「次世代シャイン」の品種改良も進んでいる。

 シャインマスカットは、マスカット系ブドウと病気に強い米系ブドウを交配させ、広島で生まれた。粒の色は緑色、糖度が高くさわやかな風味が特徴だ。2006年に品種登録され、翌年から県内でも苗木の供給が始まった。

 県内の各JAが出荷した露地ブドウについてJA全農やまなしがまとめた結果、昨年の出荷量は約4654トン。全品種のうち約38%を占め、長らく1位をキープしてきた黒系ブドウ「巨峰」(31%)を初めて上回った。

 全農の担当者によると、今年のシャインマスカットの出荷量は、昨年比でさらに1割ほど増える見込み。「急速に巨峰から世代交代が進んでいる」という。

 巨峰の産地として名高い山梨県山梨市牧丘地区にある「ぶどう屋まるテツ(金へんに「矢」)」では、10年ほど前からシャインマスカットを導入、今では栽培面積の7割を占める。「食べやすいだけじゃなく、病気にも強く、つくりやすいからブームになった。もう巨峰に戻ることはない」。2代目の広瀬真一さん(39)はそう話す。

 シャインマスカットといえば緑色だが、色違いなど品種改良も進む。

 甲州市勝沼町勝沼の「久保田園」では、13年に「赤いシャインマスカット」を生み出し、翌年、「シャインローズ」と命名した。

 挑戦したのは、苗木の販売が始まった直後。ベニバラードという品種と掛け合わせた。4代目の久保田雅史さん(42)は「プロの育種家ではないが、自分だけのブドウをつくりたかった。本当に運が良かった」と振り返る。

 4房から始めて増産し、今年は1千房ほどを育てた。糖度が25度を超すこともあり、「甘すぎて敬遠する人もいる。でも突き抜けた個性のあるブドウがあってもいい」。希少なブドウを求め、開園前から行列ができることもある。

 ブドウの品種改良や苗木販売も手掛ける笛吹市御坂町大野寺の「志村葡萄(ぶどう)研究所」では、様々な品種を掛け合わせ、シャインの「子ども」を20種ほど生み出してきた。

 大きな粒だと卵の大きさほどに育つ「雄宝(ゆうほう)」、断面がハート形になる「マイハート」、糖度25度にもなる「クイーンセブン」……味や香り、色や形状の違いなど多彩だ。

 栽培責任者の志村晃生さん(42)のお薦めは、黒い大粒の実になる「富士の輝(かがやき)」だ。6年前に育種したもので、「日本初のブラックシャインマスカット」とうたう。濃厚でコクのある甘さが魅力だという。

 「シャインマスカットよりおいしいブドウをつくることが目標。これだけ進化してきていることを、みなさんに知ってほしい」

 山梨県でも2018年に「甲斐ベリー7」という赤いシャインを開発した。品種登録を申請中で、昨年末から県内限定で苗木の配布を始めた。

 県農業技術課では「5年後には出荷が始まる。ブランド品種として育ってほしい」と期待を寄せる。(永沼仁)

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