リヤカーに野菜を積んで60年 「おめさん待ってる」がうれしくて

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岩波精
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 リヤカーに野菜や果物を載せた「振り売り」の女性たちが、商店街の雁木(がんぎ)を行き交う。新潟県新潟市南区の旧白根市中心部にはそんな風景がいまも残っている。

 8月のある日。朝8時半、中ノ口川にかかる凧見橋(たこみばし)。青い洋傘をくくりつけたリヤカーを押して、佐久間京子さん(81)がやってきた。対岸の西白根地区で農家を営む。この日は枝豆やトマト、キュウリにナスなど12種類の野菜を積み込んだ。気温はすでに30度。歩くだけで汗が噴き出す。

 橋を渡った先でインターホンを鳴らすと、なじみの客が財布を手に出てきた。「スーパーが近くにあるけど、味も生きも違うんだて」。自転車や車で佐久間さんを追いかけてくる人も。「この人はお客がついてるから、下に行くまでにのうなるんだ」。坂道を下り、商店街に出るころにはキュウリが売り切れた。

いつの間にか、橋を渡るのが楽しくなった

 振り売りを始めた頃、川には木造の橋がかかっていた。21歳で結婚すると、夫の妹から「豆を売りに行ってくれるかね」と頼まれた。恥ずかしくてうつむいたまま、一輪車を押して歩いた。「しょーして(恥ずかしくて)ねえ。橋の上に来ると汗が止まらなかった」

 子育てをしながら夫と農業を…

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