医師・病院に株提供「利益相反」報道 「公正性に欠ける」と見解

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 朝日新聞社の「報道と人権委員会(PRC)」は24日、医師や病院に対する医療機器メーカーからの株提供について報じた2017年11月10日付朝刊の本紙記事について公正さを欠くなどとする見解をまとめた。

 PRCは本社の報道で生じた人権問題の救済を図る第三者機関で、東大大学院教授の宍戸常寿、法政大名誉教授の多谷千香子、元共同通信論説委員長の会田弘継各氏で構成。記事で報じられた仙台厚生病院が申し立てた。

 宍戸、多谷両氏の多数意見に対して会田氏は、病院側の主張は理解できなくもないが、記事は正確・公正を欠くとは言えないとする少数意見を述べた。

 記事は「日本の医師・病院に株提供 租税回避地の医療機器メーカー/病院、医療機器を治験」の見出し(東京本社最終版)で掲載された。

 同病院や同病院に勤務経験がある医師らが、医療機器メーカーからストックオプション未公開株を得て07年前後に売却益を得た一方、01~03年に同病院でこのメーカーの製品の治験を行ったことや、07~10年にはこのメーカーの技術を利用した他社製品の治験を行ったことを報じ、「株を取得して企業の利益になる治験に関われば、疑義を招くのは当然で、こうした利益相反は透明化する仕組みが大切」などとする識者の談話を付けた。

 病院側は「株提供は医師らがメーカーの基礎研究にあたったことへの謝礼。違法行為もなく、利益相反にもあたらなかったのに、病院の実名・建物の写真付きで報じられ、不当に傷つけられた。正確で公正な報道を掲げる新聞倫理綱領に反する」などとしていた。

 PRC(多数意見)は、記事が指摘した事実関係それ自体はおおむね誤りはないとしつつ、見出しや前文などから受ける印象の下で本文を読む一般読者の通常の読み方からすれば「同病院が企業の利益になる治験の見返りに株の提供を受けた、もしくはその疑いが強い」との印象をもつと判断。だが、朝日側はその根拠を示しておらず、推測にとどまっているとした。また、病院の実名や写真の掲載は倫理的に非難されるものだとする印象を強めているとした。

 朝日側は、たとえ株提供が治験の見返りでなかったとしても、この場合、同病院とメーカーは外観上、利益相反にあたり、記事は、この点について問題提起したものだなどと主張した。

 だがPRCは「利益相反は幅広い概念。朝日側がどう捉えているか明確にして異なる捉え方との違いを示すべきだったのに記事で説明がない」と指摘。公正性に欠けると結論づけた。

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 見解全文は本社コーポレートサイト・会社案内「ガバナンス」の欄(https://public.potaufeu.asahi.com/company/release/info/2021/0525_prc.pdf別ウインドウで開きます)にあります。

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記事は利己的 残念

 仙台厚生病院の目黒泰一郎理事長の話 当院の申し立てを丁寧に審査して頂き心から感謝致します。ただ、私から見ると、利己心からの取材はいかに当院が誠実に対応しても利己的記事としかならなかった点は大変残念です。今後、記者を信じて取材に応じることは出来なくなりました。

公正報道 今後も努力

 多賀谷克彦・ゼネラルマネジャー兼東京本社編集局長の話 PRCの見解と、各委員のご意見の趣旨を真摯(しんし)に受け止めます。記事でお示しした事実関係については、おおむね誤りはないとの見解をいただきましたが、公正な報道を目指して今後も努力を重ねていきます。記事の構成や見出し、写真などの扱いについて十分配慮してまいります。

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