樹齢150年の大フジ守る86歳 教諭退職後に樹医に

岩波精
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大雪で倒れたフジをよみがえらせた

 豪農の館として知られる北方文化博物館(新潟市江南区)で22年前から樹医を務める。作業着に長靴、首には双眼鏡をかけて館内を歩き回る。

 今年1月、樹齢150年以上と伝わる大フジが棚ごと倒れた。駆けつけると、真っ白い雪の隙間に枝がちらりと見えるだけ。「ああ大変だ」。雪解けを待って作業を始めると、枝はほとんど折れていなかった。心配する同館スタッフに「フジはしなるから枯れない。絶対よみがえる」と伝えた。この木は強い。助ける自信があった。

 小学校教諭を退職後、樹医の資格を取った。自宅は築200年の旧家で、その庭の管理をするためだった。すると、旧知の仲だった当時の館長から「うちに来なさい」と声をかけられた。

 広大な敷地にある数え切れないほどの木々は、庭師たちが守っていた。男ばかりの職人の世界。「何しに来たんだ」という視線を感じながら、来る日も来る日もはしごに登って作業を続けた。木ごとに治療計画を立て、薬剤を使って虫を駆除し、元気がなければ栄養剤を施す。そんな日々を重ね、庭師からも「先生」と呼ばれるようになった。

 フジは病害虫の被害にあった部分の治療を終え、新しい棚いっぱいに枝を伸ばしている。「まるで背後霊のように毎日手当てしてきたんです。フジも私も、よく頑張りました」。暖かな春の日差しを浴び、たくさんの花芽がほころび始めている。(岩波精)

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