空気を読みすぎ疲れてしまう「繊細さん」 私も?

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聞き手・高久潤 聞き手・稲垣直人 聞き手・大牟田透
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 私、傷ついてる? 周囲の「空気」を読んでは疲れ果てる。私が繊細すぎるのか、社会の問題なのか。さまざまな言葉で「生きにくさ」が語られる時代に、なにを心がければよいのでしょう。

「『繊細さん』の本」シリーズ著者・武田友紀さん「タフなふりしなくていい社会を」

 他人との距離や音、においが気になる。身の回りのいろいろなことに気づき、あれこれ考え込んでしまう。そんな気質の人に特有の疲れやストレスについて書いた「『繊細さん』の本」を、2018年に発表しました。

 「繊細さん」は、米国の心理学者が提唱したHSP(Highly Sensitive Person)という概念で、従来は「敏感すぎる人」と訳されてきました。でも私は、「繊細さん」としました。当事者の間で使われてきた言葉です。

 本を書いたきっかけは、私の体験です。メーカーで技術系の研究者として働いていましたが、長時間労働が原因で休職を余儀なくされました。同僚と同じスピードで仕事ができないことや、働く時間は変わらないのに、自分だけひどく疲れてしまうことに悩んでいました。

 休職期間中に本で知ったのが、HSPです。他の人よりも細かいことに気づき、疲れやすい。5人に1人くらいの気質であるらしい。私のことだな、と思いました。

 先天的な気質なのだ、と考えることで、自分が抱えてきた問題の意味が変わりました。他人と同じ仕事をしても、実は私はその人と全然違う体験をしている。例えば、働く時間が同じでも、気になる内容や量が違う。処理すべき情報が多いのだから、疲れるのは当然です。自分が悪いのではなく、場所が合っていないだけ。心ではなく環境とのマッチングの問題なのだと気付きました。

 よく誤解されますが、繊細さは、傷つきやすさや、不安定さとは別です。個人差はありますが、騒音が苦手だったり、職場で他人との距離が近いと落ち着かなかったり。「感じ方」の違いに起因する困りごとがあるだけなのに、幼いころから「神経質過ぎるから直しなさい」と言われて育つ。つらいのは、「自分が弱いんだ、普通じゃないんだ」という自己否定につながるから、です。

記事後半では、「こうした現状の裏には自分は他人にどう思われているか、と考えざるをえない社会がある」と指摘する社会学者・土井隆義さんや、「まずは当事者の声を臨床現場で虚心に聞き取ることが重要」と語る精神科医の松本卓也さんが、「繊細さん」におすすめする対処法や問題の背景を論じています。

 HSPの存在が知られるよう…

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