アフガニスタンで農業用水路を建設し、砂漠を農地に変えた中村哲医師の記念碑2基が、用水路の取水堰(ぜき)のモデルとした筑後川の「山田堰」を見渡す広場(福岡県朝倉市山田)に完成した。1基は、筑後川の流れと山田堰の扇状の形を先端にかたどった石碑で、中村さんの肖像と、ここを訪れた際に詠んだ句「濁流に沃野夢見る河童かな」が彫られている。もう1基は中村さんが好んだ言葉「照一隅」を刻んだ石碑だ。

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 27日に公開され、碑前で竣工(しゅんこう)式があった。式には中村さんの妻尚子さんがメッセージを寄せた。尚子さんは、中村さんが2019年12月に現地で殺害されたことを悲しみながらも、アフガンで灌漑(かんがい)事業が続けられていることに触れ、「緑の大地がますます広がっていくことを願い祈るばかりです。主人も記念碑から山田堰を眺めながら応援していることでしょう」とした。

 山田堰は江戸時代に築かれた。当時の技術を用い、急流に耐えられるように斜めに堰を築くなどの工夫が凝らされ、現在も利用されている。中村さんが現地代表を務めたNGO「ペシャワール会」の村上優会長(71)によると、取水堰建設に難航し、方法を模索する中で山田堰に出会い、ヒントを得たことが事業の最大のターニングポイントになったという。

 碑は、アフガンに水車を建設する費用を寄付した朝倉ライオンズクラブが建立した。林隆雄会長(72)は「ここを訪れる人に中村さんの功績を知ってもらい、山田堰を眺めながら中村さんとの時を過ごしてほしい」と話した。(岩田誠司)

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