今年は「億超え」はなし マスクで迎えた豊洲の初競り

長野佑介 吉備彩日
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 豊洲市場東京都江東区)で5日、新年の初セリがあった。新型コロナウイルスの感染拡大で政府による緊急事態宣言の発出が検討される中、仲卸業者らがマスク着用や手指消毒などの感染対策を徹底し、1年のスタートを切った。

 「今年はいつもと違います。3密対策にご協力ください」といった場内アナウンスがされる中、初セリは午前5時10分に始まった。威勢のいいかけ声とともにマグロが次々と競り落とされていった。

 近年、「億超え」が話題となる生の本マグロは、青森・大間産208・4キロが2084万円(1キロあたり10万円)で最高値だった。記録の残る1999年以降では、1本あたりで過去8番目の高値だが、昨年の1億9320万円(276キロ、1キロあたり70万円)と比べ、大きく下がった。

 競り落としたのは市場の仲卸業者「やま幸(ゆき)」。山口幸隆社長は「いい価格で良いマグロを手に入れられたと思う。今年もコロナ禍で不安はあるけれど、コロナを乗り越えたと言える年になってほしい」と話した。すし店「銀座おのでら」などを運営する企業に提供するという。

 このマグロを釣り上げたのは、青森県大間町のはえ縄漁船「第68幸福丸」の船長、田中稔さん(65)。4日午前8時ごろに水揚げしたマグロ2本のうち1本が、今年の「一番マグロ」になった。初セリでの最高値は3回目。「一番マグロが釣れると、いい年になる感じがする。値段(が昨年ほど高くなかったこと)は仕方がない。一番になっただけでも」と吉報を喜んだ。

 昨年はコロナ禍による外食需要の落ち込みで、大間漁協が扱うマグロの魚価は例年の3分の1ほどに低迷したという。漁協の坂三男組合長は「こういうご時世なのに、これくらいでも(値がついて)よかった」と感謝した。

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 過去の最高値は2019年にすしチェーン「すしざんまい」の運営会社が競り落とした3億3360万円(278キロ、1キロあたり120万円)。「すしざんまい」運営会社の木村清社長は初セリ後、報道陣の取材に応じ、「(コロナ禍で)自粛モードなので派手にやるのはいかがかと思った。セリは穏やかに終わった形じゃないかな」と語った。

 豊洲市場では昨年、コロナ禍の影響で、水産物の取扱高や取扱量が前年を下回る月がほとんどだった。通常業務は維持したが、水産仲卸業者を中心に4日時点で計174人が感染。マグロの競りの見学も感染防止のため2月末から中止され、11月2日にいったん再開したが、12月26日から再び取りやめている。(長野佑介、吉備彩日)

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