記者コラム「多事奏論」 編集委員 吉岡桂子
銀杏(いちょう)並木が色づくころ、母校岡山大学を訪ねた。今夏までバンコクを拠点に3年半で20カ国以上を取材した経験を、法学部の学生たちにお話しする機会をいただいた。新型コロナ対策でオンライン講義が多く、キャンパスは静まりかえっていた。
参加者は黒神直純・法学部長のゼミ生を中心に20人弱に絞られ、マスク姿で斜めに離れて座っている。窓も扉も大きく開かれている。私は透明な樹脂製のついたてを隔てて立った。留学をあきらめたり、切り上げて帰ってきたりした学生もいた。
貴重な対面の時間を受け持つのかと思うと緊張した。中国の世界での動向と、各国の対中感情の揺れについて話した。
「中国からきた留学生の友人がいる。仲良しだけど、国どうしの関係は歴史や外交やいろいろある。どんなふうに向き合い、話したらよいでしょうか」
ひととおり話し終えた後、質問をくれた。法学部2年生の女子学生(20)だ。
「まず自分のことや日本のことをよく知り、語れるようになるといいなと思います」。そう答えて、付け加えた。「議論はけんかじゃない。対立しても、もっと仲良くなれる機会になるかもしれないね」
「友人」が気になった。きくと、江蘇省出身の2歳年上の女性だ。外国語の授業で知り合った。アニメ「名探偵コナン」が好きで、日本にあこがれていた。卒業後の帰国を約束し、渋る両親を説得して来日。図書館でアルバイトし、何でも一人で解決していく彼女を、この女子学生は尊敬している。
二人で並んで歩いていた時の…
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