「4Kは突貫工事」特殊環境で試験放送、視聴者置き去り

有料記事4K放送は暗いのか

松田史朗
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検証 4K放送は暗いのか⑥最終回

 映像の美しさを売りに2018年末に始まった4K放送に、視聴者の一部から「画面が暗い」との指摘が出た。その事実を確かめ、原因と対策を探るべく、半年近く取材を続けてきた。実験映像をもとに、テレビメーカーや放送局、業界団体、映像の専門家など、取材した相手は40人以上に及ぶ。

 映像の美しさは明暗だけでは測れないし、美しい映像を届けようと放送局やメーカーの人たちが大変な努力を重ねていることもわかった。それでもやはり視聴者の立場で考えたときに、4K放送はいくつかの見過ごせない問題点を抱えていると言わざるを得ない。

 4K放送が「暗く見える」との視聴者の意見がある。「テレビの輝度が低いと画面は暗くなる」との複数の技術者の証言がある。なのに、画像の明暗にかかわる大事な指標である「輝度」の数値を多くのメーカーは公表していない。

 放送局側の都合で、従来の2K放送用の機材で撮影した番組を4K向けに変換(アップコンバート)した結果、画面が暗くなるケースがみられた。結果として、高いお金を払ってテレビやチューナーを買い、わくわくしながら有料の4K放送を見た視聴者の一部から「暗い」「期待はずれ」といった落胆の声が上がってしまった。

 こうした問題点は偶発的なものではない。関係者は事前にある程度わかっていたのではないだろうか。

「突貫工事」

昨年末に始まったBSの4K放送が「暗く見える」との情報が朝日新聞に寄せられました。テレビの問題なのか、放送の問題なのか。原因と対策を追った取材の一部始終を6回のシリーズで伝えます。ご意見や感想は(keizai@asahi.comメールする)にお寄せください。

 取材したある放送局の幹部と、大手電機メーカーの幹部が、期せずして似たようなことを言った。「(4K放送の準備は)突貫工事だった」「本物の試験電波が入ってきたのは本番直前だった」というのだ。

 4K放送は、総務省、NHK、民放各社、家電業界など、官民挙げて進めてきた一大プロジェクトである。なぜ本番直前にバタバタすることになったのか。

 本放送に至る経緯を検証する。

 総務省が4K放送を始めると表明したのは13年のことだ。地上波アナログから地デジへの移行(11年~12年完了)で需要が「先食い」され、テレビ市場は冷え切っていた。そこで次なる「起爆剤」の期待を集めて登場したのが4Kテレビだ。

 当時、4Kの本放送の開始は「20年」と想定されていたが、総務省は14年8月、その時期を「18年」に2年前倒しした。

 この間に何があったのか。13年9月、東京五輪の20年開催が決定したのだ。

 翌15年7月、総務省が示し…

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