和歌山小5男殺害、高裁も懲役16年 責任能力は認める

遠藤隆史 細見卓司
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 和歌山県紀の川市で2015年2月、小学5年の森田都史(とし)君(当時11)が刺殺された事件で、殺人罪などに問われた無職中村桜洲(おうしゅう)被告(26)の控訴審判決が16日、大阪高裁であった。和田真裁判長は、被告が心神耗弱状態だったとした17年3月の一審・和歌山地裁判決を破棄。完全責任能力を認めたが、改めて一審と同じ懲役16年を言い渡した。

 高裁判決によると、中村被告は発達障害の一種である自閉スペクトラム症の影響で、森田君が自分に嫌がらせをしていると考え、その憤懣(ふんまん)を晴らすため、15年2月5日午後、同市後田(しれだ)の空き地で森田君の胸などを刃物で刺すなどして失血死させた。

 高裁は、起訴前の精神鑑定をふまえて被告が犯行時は心神耗弱状態だったとした一審判決の認定を検討。高裁での精神鑑定の結果などから、被告は自閉スペクトラム症の影響で被害者らが暴力団員だという妄想で殺害を決意したが、殺害を違法と理解できる程度の判断能力はあったなどとして完全責任能力を認めた。

 その上で、心神耗弱を前提としたものでは、一審判決の量刑はかなり重いと指摘。「被害者に落ち度はなく、経緯はあまりに理不尽だが、動機は自閉スペクトラム症の影響を色濃く受けたものだ」などとして、懲役16年が相当だとした。

 判決後、森田君の父親は「一審と同じ(量刑)だが一段と軽くなったと思う。完全責任能力があるのに、なぜこういう判決になったのか」と憤った。今後の対応は大阪高検と相談するとしながら、「少しずつでも進めるよう頑張りたい」と言葉を絞り出した。遠藤隆史、細見卓司)

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