亡き父、酒に酔うと「化け物」になった それでも憎めず

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日高奈緒
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 「私はイネイブラーですか?」。漫画家の菊池真理子さんは亡くなった父親のアルコール依存症を疑って以来、取材などで精神科医らにそう尋ねてきた。

アルコール依存症患者の問題行動を、知らず知らずのうちに助長している身近な人たちを「イネイブラー」と呼ぶ。元々は英語で「できるようにする人」という意味で、依存症の治療などで使われる専門用語(特定NPO法人日本トラウマ・サバイバーズ・ユニオンによる)

 父は「酔うと化け物」で、酒に弱く、ビール1杯で泥酔。休日は自宅で仲間と飲み明かし、菊池さんと遊ぶ約束を破った。

 酒を飲まなければ「まともな父」は、経営者として家族と会社を支えた。菊池さんは、酒に酔うのが大人だとも思い、父の酔態を「笑える武勇伝」と友人に紹介することもあった。

 周囲から「面白い」と人気だった父は、家族にだけ迷惑をかけた。

 酔いつぶれた父を介抱し続けてた母は疲れきり、毎日のように泣き、新興宗教に入れ込んだ。そして菊池さんが中学2年のとき、自ら死を選んだ。

 父は母の死を機に酒を断ったのに、1カ月もたたないうちに禁を破った。菊池さんと、小学生だった妹が母の代わりに父の面倒を見る羽目に。夜道で酔いつぶれ、寝たばこで畳を焦がし、風呂場では顔を湯につけて浮かんでいたことも。

 「私が関わらないとこの化け物は死んでしまう」。

 菊池さんと妹は、社会人にな…

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