母の介護10年、相続で「評価されず」 長男夫婦の苦悩

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中井なつみ 立松真文
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 親の介護がからみ、きょうだい間で相続トラブルになるケースがあります。介護をした人の貢献が相続においては認められにくいことが、問題を複雑にしているようです。

 「母に対する介護の苦労は、相続の場では評価されませんでした」

 昨秋、家庭裁判所で弟たちとの調停を終えた中部地方の70代の男性はそう振り返る。

 3年前、認知症だった90代の母を亡くして間もなく、離れて住む弟が久しぶりに自宅を訪ねてきた。男性の家の敷地は母との共有になっていた。遺産分割のために家を処分し、換金してほしい、と言われたという。

 近くに住む母が要介護状態になってから10年余り、男性は妻とともに母の介護を中心に生活してきた。ヘルパーの助けを借りつつ、妻は自宅近くで一人暮らしをしていた母の家に毎日通い、食事の用意など身の回りの世話をしてきた。母の認知症が進み、施設に入ってからも頻繁に訪問。男性は60歳を超えても仕事を続けていたが、母の世話に専念するため、退職した。

 「離れて暮らす弟たちには頼らず、長男の務めと思って介護してきた。これは、評価されるべきではないか」

 弟たちは、平等に分けることを希望したが、男性は母への「特別の寄与」があったとして調停を申し立てた。

 調停では、欠かさず付けていた日記から妻が介護に割いた時間を積算。ヘルパーの時給で換算した額に、男性が退職しなければ得られるはずだった数年間の収入を足し、計数千万円を「寄与分」として主張した。

 「認められるもの」と思って…

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