使われなかったAED 少女死亡の教訓、救助モデルに

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後藤泰良 板橋洋佳
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小さないのち 悲しみと歩む

 「ママ、大好き」「何言ってんのー」。2011年9月29日朝、小学6年生だったさいたま市の桐田明日香さん(当時11)は冗談交じりに母親の寿子さん(47)に投げキスをして、自宅を出ていった。

 その日の夕方、駅伝のメンバーを選ぶ選考会が校庭であった。明日香さんは全力で1千メートルを走りきった直後に、倒れた。

 教師らは呼吸があるなどと判断し、担架で保健室に運んだ。救急車が到着するまでの11分間、心臓マッサージなどの救命措置は行われなかった。学校には、心臓に電気ショックを与える自動体外式除細動器(AED)が置いてあったが、使われなかった。意識が戻らないまま、明日香さんは翌30日の夜、家族が見守るなかで息を引き取った。

 呼吸に見えたのは「死戦期呼吸」と呼ばれ、心肺停止後に起こる「あえぎ」だった可能性があるという。救急車を待つ間にAEDなどの救命措置が行われていれば助かったかもしれないと、寿子さんは思っている。

 絵が好きだった明日香さん。学校のテストの裏などによくイラストを描いていた。工作や作文なども得意で、コンクールで賞をもらったことも。将来の夢は母親と同じ看護師。照れくさかったのか家族には話していなかったが、いとこらには「看護師になりたい」と打ち明けていた。

小学6年生だった桐田明日香さんは校庭で1千メートルを走りきった後、突然倒れた。救急隊が到着するまで救命措置は行われず、翌日に亡くなった。遺族らの再発防止の願いを受けて作られた対応マニュアル「ASUKAモデル」がいま、各地で命を救っている。

 「大切なものは家族と友だち…

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