「成功しても…」 矢沢永吉さんが語る幸せの見つけ方

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寺下真理加
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 昨年12月19日、日本武道館での公演記録を前人未到の142回目に塗り替えた、ロックシンガー、矢沢永吉さん、68歳。パワフルで伸びのある低音で歌い、踊り、走る2時間余のステージ。昭和に反骨の音楽として日本にもたらされ、平成に多種多様に広がったロックカルチャーの原点を体現している。公演を終えて一息ついた年末の矢沢さんが、平成の一時期に自身が経験した、価値観の転換点を語った。

 朝日新聞からこのインタビューを依頼されて、何をしゃべればいいんだろうと思ったんです。というのも最近、世の中にああだこうだと偉そうなことを言いたくない。そういうところを過ぎてしまったんです。

 昔はインタビューでもガンガン吠(ほ)えてたし、怒っていました。自分に怒っていたのかも知れないし、ジャパニーズロックというものを、もっと定着させたいと思っていたし。ロックミュージシャンは、もっとごはん食べれるように、リッチにならなければとか。そんな熱い思いも、いっぱいありました。

 もともと、日本のロックというのはコピーですからね。海の向こうへの憧れ。それで「日本流の、日本のロックを」みたいなことで、皆さん、日比谷の野音(野外音楽堂)とかで、なんだかんだやって。憧れだけじゃダメだ、ちゃんと海外のミュージシャンに負けないくらいメジャーな、メシ食えるようなアーティストが、ボンボン出なきゃとかいう、持論もあって。

 月日は流れて、デビューして45年を超えて。ずっと変わらずあったのは、ステージで、音楽で、お酒で。最近、あまり飲めなくなったんですけど(笑)。年齢も68歳になって、幸いなことに、まだ現役でやらせてもらっている。スティル・ロックシンガー。やり続けることができている。ごはん食べれて街から街へ、今季のツアー全26公演、ぶっちぎり完走、チケットもソッコー完売。昔の自分の名前にぶら下がって生きてない。こんなうれしいこと、感謝なことないですよ。だから、吠える必要なくなったのかな。

 僕は若い頃、「成功するぞ、金持ちになるぞ、見てろ」と目標を掲げたわけです。自分に暗示を掛けました。「言っちゃえ、言っちゃえ、夢や気持ちを」と。日本語には「風呂敷広げる」という言葉がありますが、今って、みんな風呂敷も広げらんないじゃん。広げたら何を言われるか解んないし、バッシング受けるし。広げた風呂敷、畳まなきゃならなくなるのも怖い。畳むことに責任持ちたくないって、ホラも吹かなくなっちゃってる。ホラって、別にオレオレ詐欺みたいなホラじゃないですよ。ホラ吹きまくった矢沢青年、捨てたモンじゃなかったね(笑)。

 「アンチ矢沢」は、業界にもいっぱいいた。人の言うこと聞かない。しっぽ振らない。生意気。「あいさつ一つしてこない」となる。矢沢本人はと言うと、形なんてどうでもよくて、あいさつより何より、音楽でどこまで上に行けるかで突っ張っていました。

 この世界は「取るか、取られ…

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