「かわいいね」言われる時こそ甘えずに 小池百合子さん

聞き手・三島あずさ
【動画】少女たちへのメッセージを語る小池百合子都知事=西畑志朗撮影
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 3月8日は国際女性デー東京都知事小池百合子さんは「少女も大志を抱いてほしい」と語ります。

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 小学校の頃は、母からもらうお小遣いが月500円でしたが、中学になったら、要求もしないのに月1万円になった。授業料も文房具も洋服も、全部自分でやりくりをしなさい、と。足りなくなると、庭の芝刈りや母の肩たたきなど「家庭内アルバイト」をしました。

 「結婚しても夫が事故で死ぬかもしれない。その時に困らないように、自分の足で生きていけるようにしなさい」。母から、そんなことをいつも言い聞かされて育ちました。母は大正生まれ。少女時代は戦争で、やりたいことがやれなかった。だから、「やりたければ何でもできる時代に、何もしないのはもったいない」という思いがあったのだと思います。

 「自分の好きなことをしなさい。ただし、それを極めなさい」とも言われました。今で言うところのオンリーワンですね。

 神戸で育ちましたが、高校生の時、「東京の大学に行きたい」と言ったら「そんなに遠い所はダメ」と反対された。なのに、留学先にエジプトを選んだら大賛成。他のみんなと違う、オンリーワンになれるから、ということですね。

 母は私の好きにさせてくれた。主婦だった母も、私が留学から帰国した後、突然「私も好きにさせて」と言ってエジプトのカイロに日本料理店を開いたんです。当時、カイロに日本料理店が一つしかなくて、そこで食べたすき焼きにキャベツが入っていたのが許せなかったみたい。

 (自民党総務会長防衛大臣、都知事など)たくさんの「女性初」を経験してきましたが、母の影響か、「女性にはできないんじゃないか」などと不安になったことは全くない。むしろチャレンジ精神がいつも上回っていました。いろいろな国を見てきましたが、普通に女性が様々な分野で活躍している。

 むしろ日本が特殊なんです。だから私が、アイスブレーク、氷を割る、それでまた後に続いてくれる女性がいたらいいなと思って、歩んできました。

 私は10代の頃から、10代では何をして、20代では何をして…とライフサイクルの「自己マーケティング」をしていたんです。だいたい予定は狂ってるんですけどね(笑)。

 10代、20代は、たいてい「若いね」「かわいいね」と結構ちやほやされる。でも、私が20代でテレビのキャスターになった頃、というか、当時は男性の「アシスタント」という位置づけでしたが、女性のアナウンサーの方が裁判をやっていた。年を重ねたら番組を外された、それはおかしい、と。なるほど、日本では、女性はある年齢をすぎると役職を変えられるんだ、というのを目の当たりにしました。

 単に「若い」とか「かわいい」とかで判断するほうもどうかと思うけれど、女性も、何かの専門になるとか、自らを鍛えていかなければと思います。特に20代が大事。「かわいいね」とちやほやされる時代こそ、その言葉に甘えず自分を鍛える。人生は長いのですから、最後まで自立して生きていくためには、20代こそ一番ため時です。

 男性の場合は、しがらみや「こうあるべきだ」という既成概念に縛られがちですが、女性はそれがない。時代の変革のドアを開ける役目があるんじゃないかと思っています。

 大学などの成績では男性よりもむしろ女性のほうが優秀なのに、企業や組織に入るとそれが逆転する。男性のほうが、ある意味ゲタをはかせてもらっているんですよ、この国は。

 採用の仕方だとか、人事のあり方だとか、出産で一時期抜けてしまうと待遇が不利になるだとか、そこを見直す必要があると思います。「1億総活躍」と言いながら、男女格差指数で日本の順位は下がっているのが現実。まだ覚悟が足りないということの表れです。男性側の覚悟、そして、女性側の覚悟も。女性が自分自身でバリアーを作っている、という部分もあるでしょう。

 ぜひ、鳥の目、虫の目、魚の目を持って下さい。「部長が嫌い」とか、目の前のちっぽけなことにとらわれず、世界全体を見る、ものごとを鳥の目で俯瞰して見ること。とはいえ仕事は日々の積み重ねなので、そこはミクロの目、虫の目を持つ。それから、いまプランクトンはどこにいるかといった潮流を見る力。時代の流れや、自分の年齢に応じて求められていることは、魚の目で見極めることが大切です。

 「少年よ、大志を抱け」という言葉がありますが、少女も大志を抱いていただきたい。小さな志を一歩一歩積み重ねていく、そのことが、結果としての大志の達成につながります。ぜひ、自分の足で歩ける女性になって下さい。(聞き手・三島あずさ)

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 こいけ・ゆりこ 1952年生まれ。兵庫県出身。エジプト国立カイロ大学を卒業。アラビア語通訳やニュースキャスターを経て92年に参議院議員、93年に衆議院議員に。環境相として「クールビズ」を提唱。女性初の防衛相自民党総務会長などを歴任し、2016年8月、女性初の東京都知事に就任した。

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