虐待通報、共に考える 市町村と連携(児相の現場から)

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第4章「連携」(2)

 児童相談所の(児相)の会議室。ワーカー(児童福祉司)で係長のヨシコ(仮名)が、市町村で新たに虐待などの相談対応にあたるようになった職員10人と向かい合っていた。

 ヨシコは児相に来て11年目、40代のベテランだ。ふだんは虐待対応の最前線で奮闘しているが、この日は午前11時から、市町村向けの研修の講師役を務めていた。

 虐待通報を受けたとき、保護者と子どもの状況をどうやって見極めるのか。危険度を判断するための「アセスメントシート」の使い方について、実際に考えられる事例を挙げながら講義を始めた。

 学校からの通報で、小学4年の母子家庭の女の子が「母親にほうきでたたかれた」と担任に訴えた、という設定。学校からの話や子どもへの面接などで得られたとする情報をヨシコが読み上げた。

 「たたいたのは、部屋の片付けをしていなかったことへの罰」「少し前にも母に拳で殴られて腕にあざをつくっていたので、学校が注意した」「家庭訪問すると家の中は比較的きれい」……。

 3グループに分かれ、アセスメントシートをチェックしながらどう対応するべきかを話し合った。参加者の男性が手を挙げた。「緊急対応が必要。すぐ保護するべきだ」。ほかのグループの女性は「お母さん自身も寂しいのかな。すぐに保護でなくていいが、早急に対応した方がいいと思う」。

 「これが正解で、これが不正解というのはありません。ある情報でどんなことが考えられるのか推測することが大切。人の考え方、価値観には幅があります。だからこそ、ひとりでチェックするのではなく、複数で見ることが大事です」とヨシコ。情報が少ないと判断するのが難しい。「どんなことがあったかを具体的に聞いていくことが大切。事実を集めてください」

 研修は午後5時近くまで続いた。

 児童相談所だけでなく、市町村も子どもや家庭に関する相談を受けるなど虐待対応を担うようになった。市町村職員の「力量」を児相が引っ張り上げながら、児相のワーカー自身も専門性を高めていくことが大きな課題になっている。

 虐待のサインを見逃さず、対…

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