「死に支度」 母の介護で意識した(わたしの思い 鳥居りんこさん:3)

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聞き手・坂本真子
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 エッセイストの鳥居りんこさんに、親の介護に奮闘してきた10年余りの日々を語っていただいた連載の3回目です。毎週木曜日に配信、全4回の予定です。

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 ケアマネジャー(ケアマネ)の友だちがたくさんいます。びっくりしたんですが、その介護のプロたちが異口同音に「75歳で死にたい」と言うのです。

 これは現在の日本の健康寿命の数値を意識してのことで、介護のプロたちは日常的に医療・介護に依存しない年齢の境が「75歳である」と実感しているのでしょう。2010(平成22)年のデータによると、男性の平均寿命は79・55歳、健康寿命が70・42歳、女性の平均寿命は86・30歳、健康寿命が73・62歳となっています(注:データの出典は末尾に)。

 どんな状態であろうとも「長寿」にだけ向けられていた意識が、介護の現場から「健康であってこそ」という具合に風向きが変わってきていることは大変喜ばしいことだと思います。

 いま現在、介護状態に置かれている高齢の方々には難しいかもしれませんが、ケアラー世代の私たちは「死に支度」を意識していくべきだと感じます。

 そこで、私は最近、断捨離を始めました。捨てられなかった衣類、いつか必要になるかもという思いで積み重なる書籍類、いつのまにかたまってしまった食器類、半世紀分のアルバム……。物から始めて、ついでに手を広げ過ぎていた人間関係も着手できたらいいなぁと思っています。物も人間関係も量ではなく、自分自身の居心地の良さを優先したいなぁと考えています。

 成人した2人のわが子には、大学を出たとき、こう言い渡しました。

 「これからいろいろなことで…

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