娘の心を刺したためらいの刃(きょうも傍聴席にいます)

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塩入彩
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 結婚、出産、マイホームの購入……。順調な暮らしの中にいたと見えた母親が、3歳の娘に刃を向けた。母親は法廷で、ある病を打ち明けた。

 6月15日、東京地裁の718号法廷。濃紺のワンピースに身を包んだ被告(37)は、目を潤ませながら法廷に立った。罪名は、当時3歳だった長女への殺人未遂罪。

 裁判長「起訴状の内容に間違いはありませんか」

 被告「ありません」

 法廷で、事件までの経緯が明らかになった。

 被告は趣味のスノーボードを通じて夫と知り合い、2009年に結婚。11年に長女が生まれた。まもなく、東京都大田区に新築のマンションを購入した。

 ただ、夫は九州への転勤が決まり、12年1月、マンションの新居へは母娘の2人で入ることになった。

 生活は順調だった。4月には育児休暇が明けて仕事にも復帰した。娘は耳鼻科に通うことはあったが、同年代の子と比べてもよく成長していた、と被告は振り返る。

 しかし、13年6月ごろから、被告の体調に変化が生じる。

 被告「ピリピリとのどが痛み、全身にしびれがありました」

 専門のクリニックへ行くと、化学物質過敏症などと診断された。化学物質が原因で、頭痛やめまいなどが起こる症状のことだ。ただ、厚生労働省によると、専門家の間でも見解が割れていて、病気としてはっきりしない面が多いという。

 弁護人「クリニックでは何と?」

 被告「『娘も将来、同じ病気になるか』と尋ねたら、その可能性はあると言われました」

 以来、オーガニックの食材を…

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